top of page
2026年8月

立命館アジア太平洋大学(APU)

2025年4月〜7月

プロジェクト期間:

地元の野菜を、地元の駅から ― 地産地消をかたちにした『ひじまち駅マルシェ』

編著者:

キャンパス・ツールボックス編集部+ヒジベジ

地元の野菜を、地元の駅から ― 地産地消をかたちにした『ひじまち駅マルシェ』

2025年度の活動ハイライト

減っていく農家、行き場のない規格外野菜、活用されない駅 ― 地域の課題を前に、学生4名が「地元の野菜を、地元の駅から」売る直売マルシェを発案した。役場の橋渡しで5軒の生産者とつながり、地元の野菜と卵は2日間で完売。地産地消の取組は新聞やラジオでも紹介され、継続的な活動『ヒジベジ』へとつながった。

タグ:

地域産業・農業  大分県日出町  官学連携

背景・課題

​ 

・日出町では少子高齢化を背景に後継者不足・人手不足が進んで農家が減少し、特産品のPR不足も課題となっていた。畑では、本来食べられるのに出荷されない規格外品も生まれていた

・JR豊後豊岡駅の併設スペースが、活用されないままになっていた

・地域課題の解決に貢献する実践的な学びを模索する中で、学生たちが「地元の野菜を、地元の駅から売る」という企画を発案した

課題解決アプローチ

​ 

・使われていない駅の併設スペースを直売の場に変え、地元の野菜を地元で販売する地産地消のマルシェを企画した

・日出町役場(農林課)の橋渡しで地域の生産者5軒とつながり、産官学(農家・JR九州・役場・大学)の連携体制を築いた

・規格外の野菜もあわせて仕入れて販売し、フードロス削減と日出町の魅力発信につなげた

生み出した成果

​ 

・地元の野菜と卵は2日間・3会場で完売。当日は55名の方が来場・購入した

・売上45,390円・利益28,790円は、農家への御礼の品と今後の活動費に活用

・新聞1件・Web新聞1件・OBSラジオ2件で紹介された

・マルシェで生まれたつながりは、その後の継続的な活動『ヒジベジ』へと発展した

行政・地域の応援

​ 

行政の応援:日出町役場の農林課が企画相談に親身に応じ、出品農家を紹介。当日の運営にも役場の方が参画した。 地域の協力:5軒の農家・事業者が野菜・卵を提供(うち3軒は無償提供)。真那井トマト農園が3日間の収穫体験を受け入れた。豊後豊岡駅(JR九州)の併設スペースを会場として利用し、駅員OBの方が現地調整に協力。

取組のストーリー
地元の野菜を、地元の駅から ― 地産地消をかたちにした『ひじまち駅マルシェ』

立命館アジア太平洋大学(APU)のサステイナビリティ観光学部には、地域の現場に出て課題解決に実践的に取り組む「専門実習」という科目があります。本稿は、この専門実習から生まれたプロジェクトの一つ、『ヒジベジ』による2025年度の「ひじまち駅マルシェ」の取り組みの記録です。


目次


  1. 使われていない駅と、捨てられる野菜

  2. 企画を持ち込み、輪を広げる

  3. 畑で学んだ3日間

  4. 当日 ― 朝7時の搬入から完売まで

  5. 工夫した点

  6. 苦労した点・反省点

  7. 得られた学び

  8. 今後の展望


1 使われていない駅と、捨てられる野菜


私たちのチームは、専門実習で大分県日出町の地域課題に取り組む中で、いくつもの「もったいない」に出会いました。日出町では少子高齢化を背景に後継者不足や人手不足が進んで農家が減り、特産品のPR不足も課題となっています。畑では、本来食べられるのに、形やサイズを理由に出荷されない「規格外品」が生まれていました。

 一方で、まちにはまだ活かされていない資源もありました。JR豊後豊岡駅です。青春18きっぷのポスターに採用されたこともあり、駅から海にかけての眺望が美しいこの駅には、活用されていない併設スペースがありました。

 捨てられていく野菜と、使われていない駅。これらを重ねて生まれたのが、「地元の野菜を、地元の駅から全国へ」をコンセプトとする『ひじまち駅マルシェ』です。駅のスペースを直売の場に変え、規格外の野菜もあわせて販売することで、地産地消とフードロスの削減、そして日出町の魅力発信を同時にねらいました。


2 企画を持ち込み、輪を広げる


とはいえ、学生だけで農家とつながる伝手はありません。転機になったのは、日出町役場の農林課に企画案を持ち込んだことでした。役場は学生の企画に親身に応えてくれ、打合せを経て、出品いただける農家を紹介してもらえたのです。ここから連携の輪が一気に広がりました。会場となる豊後豊岡駅では、駅員OBの方に現地で相談し、スペースの使い方を具体化。開催が近づくと、Instagramでの発信を始め、ポスターを町内に掲示して周知を進めました。


時期(2025年)

動き

4月

目的・イベント方針の模索を開始

5月

イベント概要・実施日を決定。別府駅に販売許可を申請

6月上旬

日出町役場(農林課)に企画案を提出。農家の紹介を受ける

6月中旬

豊後豊岡駅の駅員OBの方と現地で調整

6月下旬

Instagramを開設、ポスターを町内に掲示

7月5〜6日

マルシェ開催、完売


 こうして「産=農家・JR九州、官=日出町役場、学=大学」という産官学の連携体制ができあがりました。出品いただいたのは5軒。うち3軒からは無償でご提供いただき、規格外の野菜もあわせて仕入れました。


品目

生産者・事業者

提供のかたち

トマト

真那井トマト農園

無償提供

白イボきゅうり

個人農家の方

仕入れ(規格外品を含む)

じゃがいも「キタアカリ」

田中ファーム

無償提供

とうもろこし「白雪姫」

個人農家の方

仕入れ

卵「蘭王」

協和(株)

無償提供


暘谷駅の通路に掲示されたポスター
暘谷駅の通路に掲示されたポスター

3 畑で学んだ3日間


準備と並行して、真那井トマト農園さんで3日間の収穫体験をさせていただきました。皆さんとても親切で、一つ一つ丁寧に教えてくださり、農業を間近に体験することができました。年間多くのトマトが規格外等で廃棄されているという現実を知ったのも、この畑でのことです。

 教室で「地域の課題」として学んでいたことも、現場に立つと見え方が変わります。農家さんが抱える課題を肌で感じたことが、規格外野菜の活用という、その後の活動の軸につながりました。売る野菜のことを、育てた人から直接学ぶ ― この現地での時間が、マルシェに説得力を与えてくれたと感じています。


真那井トマト農園の選果場にて
真那井トマト農園の選果場にて

4 当日 ― 朝7時の搬入から完売まで


項目

内容

日時

2025年7月5日(土)10:00〜16:00

会場

豊後豊岡駅(併設スペース)

販売

地元産の野菜4品+卵(単品・セット販売)

翌6日

残った野菜を2つのイベント会場に持ち込み、完売


マルシェ当日は、朝7時から搬入と設営を始めました。その日の朝に仕入れた野菜を、新鮮なまま店頭に並べる ― 地元開催だからこそ組めるオペレーションです。10時の販売開始から、会場には役場の方々や地域の方々が期待以上に足を運んでくださいました。運営には役場の方も加わってくださり、来場者からは好評の声とともに、運営へのアドバイスもいただきました。

 翌日には、残った野菜を別のイベント会場に持ち込んで販売し、2日間で完売。売上から仕入れなどの費用を差し引いた利益は、農家さんへの御礼の品と今後の活動費に活用しました。一連の取組は、新聞やラジオなど複数のメディアでも紹介されました。


5 工夫した点


・「地元の野菜を、地元の駅から」という発案そのもの:誰もが知る駅と、誰もが食べている野菜の組み合わせが、地元の方々の共感を呼んだ

・学生主導だからこそ築けた連携体制:役場・農家・駅がそれぞれの形で応援してくれる産官学の輪を、学生の立場を活かしてつくった

・規格外の野菜もあわせて仕入れ、単品と割安なセットを組み合わせて販売した

・当日の朝に仕入れて当日売り切る、地元開催ならではのオペレーション体制を組んだ

・マルシェで売れ残った野菜を翌日の別のイベントに持ち込んで売り切るなど、臨機応変に対応した


6 苦労した点・反省点


・告知が遅かった。ポスターの掲示もInstagramでの発信も開始が開催直前になり、発信の頻度や内容にもばらつきがあった。もっと早く取り組んでいれば、集客はさらに伸ばせた

・値段設定を当日までに明確に決めきれなかった

・思いついたことから行動してしまい、準備がギリギリになる場面があった。搬入や設営など、当日のオペレーションも想定よりバタついた

・町内の方々には多く来ていただけた一方、町外からの集客は今後の課題として残った


7 得られた学び


この4か月で得た学びは、大きく三つあります。

 一つ目は、実践から得た自信です。テーマの設定から企画、交渉、当日の販売まで、一から自分たちの手でつくり上げ、成果につなげられたことは、大きな自信になりました。

 二つ目は、交渉の学びです。人に動いていただくには、ゴールを決めて、現状をどう解決したいのか、そして自分たちにどれくらいの熱意があるのかを伝え、共感してもらうことが最も大切だと気づきました。

 三つ目は、現場の学びです。地域が抱える課題を「自分ごと」として捉え、調整や交渉の大変さとやりがいを実感しました。授業で学ぶことに加えて、自分たち自身で直接地域とかかわり、体験することで、より深く学ぶことができる ― 座学だけでは得られない学びを、現場からたくさん持ち帰りました。


収穫体験でお世話になった農園にて
収穫体験でお世話になった農園にて

8 今後の展望


地域イベントへの出店、出店農家の拡大、国際交流を軸にした「英語×料理×農業」の交流イベントの定期開催。そして、真那井トマト農園さんとの関係を継続し、「本来食べられるのに捨てられている野菜」を商品化して、将来的にはふるさと納税の返礼品への掲載につなげること ― マルシェを終えた私たちは、そんな構想を描きました。

 これらの構想は、絵に描いた餅では終わっていません。マルシェで生まれたつながりは継続的な活動『ヒジベジ』として引き継がれ、規格外品を使った商品開発も進めるなど、構想の多くが実際の活動として実現しています。この活動を自分たちの代で終わらせず、次の学年へ引き継いでいくことが、私たちの目標です。


後輩たちへのアドバイス

​ 

・やりたいことをまず書き出し、ある程度の形にしたら動き出そう。活動の中で付け加え、改善していく方が、良い形に仕上がる

・「学生」という立場を大切に、有効活用すること。ゴールを決めて、現状をどう解決したいのか、どれくらいの熱意があるのかを伝えれば、役場や地域の大人が積極的に協力してくれる

・告知は早く。ポスターやSNSの発信が遅れると、集客に直結する

・値段や当日の役割分担は、事前に決めきっておくこと。当日は想定以上にバタつく

・役割分担を人任せにせず、自分から役割を見つけ、チームをまとめる側に回ろう

再利用できるナレッジ

​ 

・行政の窓口は、学生の企画に意外なほど親身になってくれる:企画案を持ち込んで相談すれば、生産者の紹介や当日の運営協力など、具体的な応援につながる

・「既にある場所」を会場にすれば、身軽に始められる:駅のように人の目に触れる遊休スペースを使えば、会場を新たに用意することなく開催でき、場所自体が話題性を持つ

・生産者の協力は、丁寧な関係づくりから:活動の目的や背景を丁寧に伝え、直接コミュニケーションを重ねることで、さまざまな形の協力につながる。規格外品を扱えば、仕入コストの抑制とフードロス削減の意義も両立できる

・「売り切る」までを設計する:割安なセット販売などの売り方の工夫や、残った分を別の機会・会場で販売する段取りをあらかじめ用意しておけば、完売までつなげられる

関連コンテンツ

​ 

プロジェクトの成果/その後

ヒジベジ公式サイト

・その後の展開「駅の野菜売り場から、町の特産品づくりへ ― ヒジベジのその後


使われた実践ガイド

インセプションデッキ(仮)

取組者/編著者プロフィール


OBSラジオ出演時に、スタジオにて
OBSラジオ出演時に、スタジオにて

メンバー:佐藤勇翔(APU 2回生・当時)、瀬下海斗(APU 2回生・当時)、早田州豊(APU 2回生・当時)、元野アニカ(APU 2回生・当時)

bottom of page