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教育・文化・交流 大分県日出町 官学連携
背景・課題
日出総合高等学校は、地域に根ざし、地域を担う人材を送り出してきた高校。生徒が自分の学校や町を誰かに紹介する経験を通じて地元の良さを理解し、愛着を深めることが、地域の将来につながるのではないか。この仮説が企画の出発点になった。日出町には大学がなく、高校生には国際交流の機会が少ない。一方で、国内学生と国際生の混成チームが実際に日出町と高校を訪れるなかで、「日本の学校を体験する機会がない」という国際生の潜在的なニーズにも気づいた。双方に欠けていた機会を、高校を舞台に一度につくる企画が生まれた。
課題解決アプローチ
・高校生が母校や地元への理解と愛着を深めることを目的に据え、高校生が企画づくりから参加する共創型とした。当日の案内内容は高校生とチームが一緒に考えた
・国際生が体験したいのは日本の学校の「日常」そのものだと捉え、高校生が案内する校内見学ツアーを交 流の軸にした
・黒板アートと折り紙という手を動かす共同作業を用意し、語学力に関係なく交流が成り立つようにした
生み出した成果
・企画の立案から学校・役場との調整、当日の運営まで学生が一貫して主導し、高校生10名・国際生7名・大学生4名による2時間の交流プログラムを実施した
・高校生の事後アンケートでは10名中9名がすべての評価項目で最高評価を付けた。この体験は「英語が得意でなくても国際交流はできる」という自信につながった
・高校生は案内役を通じて自分たちの学校や日出町の魅力を再認識し、「もっといろいろな場所を案内したい」という声が上がった。実施後には、次の具体的な企画の提案も寄せられた。見守った教職員からは、「学校生活では見ることのない笑顔」を見ることができたという言葉が寄せられた
行政・地域の応援
地域の協力:日出総合高等学校が参加生徒への声かけ・募集、教室・施設の調整、当日の見守り、写真・SNS方針の確認まで親身に協力し、企画の実現を支えた。 行政 の応援:日出町役場は、専門実習の現地活動での意見交換を通じて構想づくりを後押しし、成果報告会では学生による継続的な交流モデルの提案に耳を傾けた。
取組のストーリー

立命館アジア太平洋大学(APU)のサステイナビリティ観光学部では、地域の現場での実習を重視しており、その一環として、日出町役場と2023年度から継続して、学生主導での課題解決プロジェクト(専門実習)を実施しています。本稿は、その2026年度のプロジェクトの一つ、日出町リアル体験ツアーチームの取り組みの記録です。
目次
企画の出発点
町なかツアー案からの軌道修正
気づいたのは、高校の「日常」の価値
高校生とつくる
当日の交流
アンケートに表れた高校生の変化
これから
1 企画の出発点
この企画をつくったのは、APUの授業「専門実習」で日出町の課題に取り組んだ4名の学生です。専門実習は、学生が実際に地域へ入り、地域課題の解決に取り組む実践型の授業です。チームは日本の学生2名と、インドネシア・韓国出身の国際生2名で構成されていました。
チームが着目したのは、地域に根ざし、地域を担う人材を送り出してきた日出総合高等学校でした。日出町には大学がなく、高校生が大学生や国際生と交流する機会は限られています。外から来た相手に、自分の学校や町を紹介し、説明する。その経験を通じて、生徒は地元の良さを自分自身の言葉で理解し、愛着を深めていく。そうした交流の機会をつくることが、地域の将来にもつながるの ではないか。チームはこの仮説を企画の起点に置き、4月には日出町役場との意見交換を通じて構想を練り上げ、「国際生と高校生の交流」を軸にした企画の骨格を固めました。
2 町なかツアー案からの軌道修正
最初に形にしたのは、高校生が国際生を案内しながら、日出の町なかをめぐるツアーでした。5月20日に日出総合高校で行った最初の打ち合わせで、チームはこの案を高校側に示しました。しかし、検討を進めると課題が見えてきました。校外の移動を伴う企画では、特に夏場の熱中症対策をはじめとする安全確保の準備を、保護者の理解を得たうえで整える必要があります。実施までのスケジュールを考えると現実的に難しい。チームはそう判断して町なかツアー案を取り下げ、構想を練り直すことにしました。
3 気づいたのは、高校の「日常」の価値
構想を練り直すなかでチームが思い出したのは、企画に先立って日出総合高校を実際に訪れたときの体験でした。教室、プール、野球場、部活動。アニメで見たことのある日本の高校の風景が、そのままそこにありました。アニメを通じて日本の高校に関心を持つ海外の若者は少なくありませんが、日本に留学していても、日本の学校に触れる機会はほとんどありません。誰かが言葉にして求めていたわけではないこのニーズに気づけたのは、国際生を含む混成チームが、実際に現地に足を運んでいたからでした。
国際生が体験したいものは、町なかに限らず、高校生の「日常」そのもののなかにもあるのではないか。校内で完結する企画なら、懸念だった夏場の熱中症のリスクを抑えられ、移動に伴う安全面の課題も解決できる。目的はブラさずに、チームは企画を校内見学ツアーとして作り直しました。6月24日の2回目の打ち合わせで校内ツアー案は了承され、先生方が生徒に声をかけてくださったこともあり、高校2年生10名の参加者が集まりました。実施日は7月8日に決まりました。
時期 | 出来事 |
4月22日 | 日出町役場との意見交換を通じて構想を練り上げる |
4月30日 | 「国際生×高校生」の企画骨格を固める |
5月20日 | 高校との1次打ち合わせ。夏場の安全確保が難しく、町なかツアー案を取り下げ |
5月29日〜6月2日 | 構想を練り直し、校内見学ツアーとして企画書を作り直す |
6月24日 | 2次打ち合わせで校内ツアー案が了承される |
7月7日 | 4グループ編成と黒板アート・折り紙の交替制を決定 |
7月8日 | 「日本の高校見学ツアー in 日出総」実施 |
7月15日 | 日出町役場での成果報告会で活動を報告 |
4 高校生とつくる
企画を進めるうえで決定的だったのは、日出総合高校の先生方の親身な協力でした。教室や移動範囲の調整、当日の見守り、写真撮影の方針の確認。打ち合わせを重ねて意識を合わせながら、学校の中で安心して実施できる形を一緒につくっていきました。
高校生が企画づくりから参加する「共創」は、当初からの構想でした。当日の案内内容や交流の中身は、高校生とチームのメンバーが一緒に考えました。自分の学校を、自分の言葉で案内する。誰かに伝えようとすることで、母校や地元の魅力に改めて気づく。案内役という役割には、そうしたねらいがありました。
当日の編成は、チームメンバー1名・国際生2名・高校生2〜3名の計5〜6名を1グループとする4グループとしました。各グ ループに必ずチームメンバーを1名置く編成にしていたため、国際生の参加人数が直前まで変動しても、グループの数や役割を変えずに対応できました。英語力は参加条件にしませんでした。日本語が堪能な国際生も参加するため、「英語が話せなくても大丈夫」と事前に高校生へ伝えました。
5 当日の交流
7月8日15時30分に開会し、日英両言語で企画を説明した後、グループ内で自己紹介を行い、高校生が国際生を案内する校内ツアーに出発しました。教室や施設、部活動の空間を高校生が自分の言葉で案内し、チームのメンバーが言語面をサポートしました。
廊下の水飲み場や教室の黒板といった、高校生にとっては当たり前の設備も、国際生には新鮮に映りました。案内する高校生たちも、国際生の反応を通して、見慣れた校舎を新しい目で見ることになりました。
後半は2グループずつに分かれ、20分×2回の交替制で黒板アートと折り紙に取り組みました。黒板には「APU × HIJI INTERNATIONAL TOUR」の文字とともに、各国の国旗や飛行機、地球の絵がチョークで描かれました。17時30分、事後アンケートの案内をもって閉会。ツアーは予定どおり無事に終了しました。


6 アンケートに表れた高校生の変化
このツア ーでは、同じ条件で事前・事後のアンケートを取り、参加者の変化を確かめることも活動の一部として設計されていました。高校生の回答で変化がはっきり表れたのは、国際交流への向き合い方です。「英語が得意でなくても国際交流はできる」という意識が事前より高まり、「もっといろいろな場所を案内したい」という声も上がりました。事後アンケートでは、10名中9名がすべての評価項目で最高評価を付けています。
国際生のアンケートで印象に残ったこととして挙がったのは、大きく3つです。1つ目は、校舎の大きさや設計、野球場・サッカー場といった施設。2つ目は、制服や部室・音楽室といった日本の学校ならではの文化。3つ目は、高校生の案内で校内を回り、一緒に黒板アートをつくったという交流の体験そのものです。「部活動に参加したい」「日本語を上達させて、また日出に来たい」という声も寄せられました。見守った教職員からは「学校生活では見ることのない笑顔を見ることができた」という言葉がありました。
実施後には、参加した高校生からSNSを通じて次の企画として、交流を深めるためのゲームや、高校生自身が案内役となって、観光名所だけでなく普段立ち寄る店を巡るツアーといった提案がありました。「高校生の日常を国際生に体験してもらいたい」という趣旨のものであり、「APUに行ってみたい」という声もありました。
7 これから
7月15日には日出町役場で専門実習の成果報告会が行われ、チームは活動の成果を報告するとともに、今回の企画を日出町で続けていくための交流モデルを提案しました。
国際生の目を通して見ると、高校生が当たり前だと思っていた学校や地域に、これまで見えていなかった価値が見つかる。そしてその発見は、高校生と大学生が一緒に企画をつくったからこそ生まれたものでした。高校を舞台にした共創のかたちは、学校のあるどの地域でも生かせるはずです。
後輩たちへのアドバイス
・受け入れ先の生徒には、準備段階から企画づくりに参加してもらうこと。実施の6週間前には一緒に検討を始める。2週間前では遅い
・学校や役場には正式な連絡経路や意思決定の手続きがある。協力を依頼するときは、事情を知っている先生や職員にまず相談してから連絡すると、その後の調整が円滑に進む
・連絡や資料づくりは、放っておくと一人に集中する。窓口は一人でも担当表で仕事を分け、毎回のミーティングに記録係を置くこと
・参加人数は最後まで変わる前提で 動くこと。3日前と前日の2段階で出欠を確かめ、1人欠けても成り立つ班編成にしておく
・アンケートは本番前に必ずテストし、事前・事後を同じ条件で取ること。記録がなければ、成果を相手に説明できない
再利用できるナレッジ
・地域の日常(学校・町並みなど)は、外部の視点から見ると価値ある交流資源になり得る。外部のニーズと地域の資源を結びつける着想が、企画の価値を決める
・多国籍チームのように背景の異なるメンバーで実際に現地を訪れると、言葉にされていないニーズに気づきやすい
・企画を実現できないときは、目的はブラさずに場所や方法を変える軌道修正で、実現の道が開けることがある
・参加者が慣れた場所で案内役を担うと、主体的に動きやすく、会話も生まれやすい。案内する側には、地域の価値を再発見する効果がある
・描く・折るなど手を動かす共同作業は、語学力に関係なく交流を成立させる手段になる
取組者/編著者プロフィール

メンバー:森下 雄介(APU 1回生・当時)、山田 蒼(APU 1回生・当時)、キムドユン(APU 1回生・当時)、アンジェラ モモ ノル イトウ(APU 1回生・当時)
