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2026年8月

立命館アジア太平洋大学(APU)

2026年4月〜7月

プロジェクト期間:

城下町を、仮想空間へ ― メタバース「バーチャル日出町」

編著者:

キャンパス・ツールボックス編集部+バーチャル日出町

城下町を、仮想空間へ ― メタバース「バーチャル日出町」

完成した「バーチャル日出町」― 桜並木と鬼門櫓

大分県日出町の二の丸通りを、ソーシャルVRプラットフォーム「VRChat」上に再現した仮想空間「バーチャル日出町」を開発・公開。二の丸館や鬼門櫓の街並みの中で歴史・観光・地域産品に触れられる展示とECサイトへの導線を備え、町の魅力を若い世代やデジタル空間の利用者に届けています。

タグ:

観光・まちづくり・交通  大分県日出町  官学連携

背景・課題

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日出町には城下かれいをはじめ多くの産品や歴史資源がある一方で、それらが若年層やデジタル空間の利用者に届く発信手段は限られていました。特に小規模事業者にとっては、オンラインでの発信や販路開拓が課題となっていました。

課題解決アプローチ

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ソーシャルVRプラットフォーム「VRChat」上に、二の丸館や鬼門櫓のある二の丸通りを再現した仮想空間「バーチャル日出町」をフルスクラッチで制作。ワールド内に観光情報や地域産品の展示、事業者の出展ブースを設け、展示からECサイトへ移動して実際の購入につながる導線を用意しました。

生み出した成果

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2026年7月13日にワールドを公開し、公開から24時間で300人が訪問。公式Xのフォロワーも公開後に100人に達しました。二の丸館・鬼門櫓・帆足萬里像などを再現した空間で、日出町の歴史・観光・地域産品に触れられる場が生まれています。

行政・地域の応援

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日出町役場とのキックオフ・ミーティングから活動を開始し、ひじ町ツーリズム協会との協議で展示する産品を選定。城下かれい料理店の出展ブース設置や、日出町歴史資料館による内容確認など、地域の関係者と連携しながら開発を進めました。ワールド内では日出町公式YouTubeチャンネルの動画も放映されています。

取組のストーリー
城下町を、仮想空間へ ― メタバース「バーチャル日出町」

大分県日出町の城下の通りを、世界最大規模のソーシャルVRプラットフォーム「VRChat」上にまるごと再現する ― 立命館アジア太平洋大学(APU)の学生チーム「バーチャル日出町」グループは、二の丸館や鬼門櫓が並ぶ二の丸通りを3Dモデリングで作り上げ、町の歴史・観光・地域産品に仮想空間の中で触れられるワールド「バーチャル日出町」を開発・公開しました。公開後は多くの訪問者を集め、町の魅力を若い世代やデジタル空間の利用者に届ける新しい入口となっています。


目次


  1. きっかけ ― 「発信が届かない」という課題

  2. 現地からつくる ― 石垣も瓦も、実物から

  3. 地域と一緒に中身をつくる

  4. 公開 ― 1日で300人が「日出町」を歩いた

  5. うまくいかなかったこと

  6. これから


APUサステイナビリティ観光学部では、現場での実践を重視した授業科目「専門実習」を開講しており、学生が主体となって地域課題の解決に取り組むプロジェクトを実施しています。本プロジェクトはその一つとして、2026年4月から7月にかけて活動しました。


1 きっかけ ― 「発信が届かない」という課題


日出町は、将軍家への献上品とされたほどの名物・城下かれいや、日出城址をはじめとする歴史資源を持つ町です。しかし、こうした魅力が若年層やデジタル空間の利用者に届く発信手段は限られており、小規模事業者にとってはオンラインでの発信や販路開拓そのものが課題となっていました。

 チームが着目したのは、アバターを使って仮想空間内で交流できるソーシャルVRプラットフォーム「VRChat」でした。VRゴーグルがなくてもPCやスマートフォンから参加でき、近年は日本を中心に利用者が急速に増えています。ここに日出町を再現した空間をつくれば、これまで町の情報が届いていなかった層に、歩いて、見て、触れる形で町の魅力を伝えられる ― そう考えたのが出発点です。


2 現地からつくる ― 石垣も瓦も、実物から


制作は、3DモデリングソフトのBlenderとゲーム開発エンジンのUnityを使ったフルスクラッチで行いました。まず取り組んだのは、現地でのテクスチャ(3Dモデルに貼る素材画像)集めです。石垣、瓦屋根、木壁、石畳など、通りを構成する素材を実際に撮影して収集しました。

 再現空間づくりで重要になるのがスケール(大きさ)の計測です。チームは通りにあった灯籠を基点に選んで実物の大きさを測り、それを基準に地面や建物のサイズを調整していきました。その後も何度か現地に足を運び、不足している素材の収集や建物の構造確認を重ねながら、二の丸館から鬼門櫓までの城下の通りを仮想空間上に組み上げていきました。


制作中の二の丸通り全景(Blenderレンダー)
制作中の二の丸通り全景(Blenderレンダー)

3 地域と一緒に中身をつくる


ワールドの大枠ができると、参考資料として関係者に見せられるようになり、活動は「地域と一緒に中身をつくる」段階に進みます。ひじ町ツーリズム協会と協議して仮想の二の丸館内に展示する産品を選定し、城下かれい料理店の出展ブースも設置しました。展示には商品の紹介パネルや手に取れる3Dモデルに加えてQRコードや購入ボタンを添え、仮想空間から各事業者のECサイトへ移動して実際の商品購入につながる導線を設けています。再現した建物や歴史の解説は、日出町歴史資料館にも確認してもらいました。

 制作と並行して、XやInstagramでは制作進捗を発信し続けました。完成を待たずに発信を重ねたことが、公開時に見てもらえる土台づくりになりました。

 主な活動経過は次のとおりです。


時期

活動

4月22日

日出町役場とのキックオフ・ミーティング、制作開始

5月2日

全体でVRChatを視察

5月9〜10日

城下かれい祭りを視察

5月13日

二の丸館を訪問、協力を相談

6月10日

ひじ町ツーリズム協会への説明会

7月1日

日出町役場とのミーティング

7月8日

日出町歴史資料館とのミーティング

7月13日

ワールド公開


仮想の二の丸館内に設けた産品展示
仮想の二の丸館内に設けた産品展示

4 公開 ― 1日で300人が「日出町」を歩いた


Blenderでのモデリングを終えると、データをUnityに取り込み、VRChat上で動作するよう調整しました。ライティングや物理判定の設定に加え、映像表現を整えるポストプロセス、鏡、日出町公式YouTubeチャンネルの動画を放映する大型スクリーン、BGMの切り替え機能などを実装しています。

 こうして7月13日、「バーチャル日出町」はVRChat上に公開されました。公開から24時間で300人が訪問し、公式Xのフォロワーも公開後に100人に達しました。桜並木の通りを歩き、鬼門櫓を見上げ、二の丸館でかれい饅頭や御城印の展示を眺める ― もう一つの日出町が、誰でも訪れられる場所になりました。


成果

内容

ワールド公開

VRChat上に「バーチャル日出町」を公開(PC・スマートフォンから参加可能)

訪問者

公開から24時間で300人が訪問

発信

公式Xフォロワー100人達成、Instagram・YouTubeでも発信

空間の内容

二の丸館・鬼門櫓・帆足萬里像などの再現、産品展示とECへの導線、広告掲示、動画スクリーン


5 うまくいかなかったこと


最大の課題は、最初に活動の範囲を広げすぎたことでした。ワールド制作に加えて、産品の展示交渉やイベント企画を同時に進めようとした結果、授業期間内で取り組める範囲を超えてしまいました。3Dモデリングの技能を持つメンバーが限られていたため作業を分担できず、一部のメンバーに負担が集中したことも反省点です。

 また、産品や店舗を仮想空間内で紹介するには掲載許可が必要ですが、制作を優先して関係者への連絡が遅れ、授業終了間際の確認となった結果、展示を予定していた事業者を一つ諦めることになりました。当初計画していたイベントも、期間の制約から授業内での開催は見送っています。企画の段階で最終的な成果物と優先順位を明確にし、チーム一丸で取り組むべきだった ― これがチームの総括です。


6 これから


チームは今後もワールドの運営・拡充を続ける方針です。日出城址など他のランドマークの制作、商店・企業の誘致、仮想空間を活用した店舗の仕組みづくり、町内の小規模事業者・農家の産品をデジタル空間やECで紹介・販売する販路開拓などを構想しています。

 直近では、ワールドを会場にしたバーチャルイベントの開催を検討しています。実現すれば、歴史ガイドや産品の解説を通じて、「バーチャル日出町」をより深く体験できる機会になります。


後輩たちへのアドバイス

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・構想を口頭で説明するだけでは、完成形のイメージは人それぞれにずれる。参考画像や簡単な試作品、役割表、スケジュールを使って具体的に共有すること。伝える力が社会でいかに重要か、身をもって実感した。

・地域創生は、観光客や知名度を増やすことだけが目的ではない。産品の販売や事業者の販路拡大など、その活動が地域にどんな利益を還元するのかまで具体的に考えて企画してほしい。

・掲載許可などの関係者調整は、制作より先に段取りする。連絡が遅れると、せっかく準備した展示を諦めることになる。

・題材の現実をよく調べること。城下かれいは想定より漁獲量が少なく、安定して確保できる量も限られていた。現実的な計画を立ててから動き始めることを勧める。

再利用できるナレッジ

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・VRChatはワールドの制作・公開に費用がかからず、訪問者はPCやスマートフォンからも参加できる。仮想空間での地域PRは、学生でも始められる。

・再現空間づくりは「基準物の計測」から。現地で基点になる物(今回は灯籠)の大きさを測り、それを基準に全体のスケールを合わせると破綻しない。

・テクスチャは現地で撮影して集めると、実在の町ならではの質感が出る。現地調査は素材収集と構造確認を兼ねられる。

・仮想空間の展示は「紹介パネル+手に取れる3Dモデル+QRコード」の組み合わせで、見るだけでなくECサイトへの導線にできる。

・完成前から進捗をSNSで発信しておくと、公開した瞬間に見てもらえる土台ができる。

取組者/編著者プロフィール

成果発表会にて
成果発表会にて

メンバー:西村公希(製作・APU 1回生・当時)、武嶋克樹(広報・APU 2回生・当時)、MANVELISHVILI IWANE(広報・APU 2回生・当時)、大津徹朗(渉外・APU 2回生・当時)、近藤誠一(デバッグ・APU 1回生・当時)

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